2016-12-17

1つの中国を否定し、喧嘩上等の男たちを配置するトランプ


2016年12月15日、南シナ海のフィリピン・ルソン島から90キロの地点で、アメリカ海軍が使っていた無人潜水艇を中国軍の艦艇が拿捕し、持ち去ったという事件があった。

この無人潜水艇は海洋調査のためのデータを集めていたものであったということだ。

アメリカ側はすぐに無線によって返却を求めたが、中国はまったく無視して立ち去ってしまった。この領域は公海であり、中国軍のやったことはまぎれもない犯罪行為である。

中国軍はこれ以外にも、爆撃機で台湾のまわりを一周するように旋回したり、自分たちが勝手に作った九段線を旋回したりしている。

中国は何をしているのか。アメリカ当局はこれを「ドナルド・トランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統と異例の電話会談を行ったことに対する報復である」と分析している。

アメリカのシンクタンクは、中国が南シナ海に造成した人工島7島すべてに地対空ミサイルを設置した可能性があると指摘している。

これに対して2016年12月15日、中国は「主に防衛のためであり、正当かつ合理的」「自分の足元で威嚇行動を受けたら反撃の用意をするものだ」と言ってのけた。


反中意識を剥き出しにするドナルド・トランプ


南シナ海に侵略し、人工島を作り、そこに軍事施設を建設し、地対空ミサイルまで設置し、それで「民間使用」と言い張る中国政府の論理はめちゃくちゃだ。

しかし、何もしない弱腰大統領のバラック・オバマはこれを座視し、口先だけの抗議以外はまったく何もしない。バラック・オバマが何もしないということを見透かして中国は着々と侵略に動いているのである。

ここまで軍事施設を建設して実効支配を進めてしまうと、南シナ海は今後は必然的に中国の領土と化していくだろう。

様々な既成事実を積み上げて領土を奪い取っていくのが中国のやり方だ。(中国による侵略・占拠・実効支配という騙し討ち工作を知れ

バラック・オバマは2015年に入ってからさすがに中国のやりたい放題に憂慮を示して中国と距離を置くようになっているのだが、距離を置いただけで中国に何かするというわけでもない。

中国が南シナ海を侵略しようが何をしようが「アメリカはもう世界の警察官ではない」と言い放って中国の好きにさせていたというのが現状だ。

今回の中国海軍による無人潜水艇の拿捕事件も、オバマ大統領は口先だけの抗議で終わらせるだろう。

しかし、問題はもうレイムダック化して誰からも相手にされていないオバマ大統領ではない。次期大統領のドナルド・トランプの動向である。

選挙期間中、ドナルド・トランプは明確に中国の言動を敵視しており、中国の安売り製品に関税をかけるとか、中国は為替操作国だとか、南シナ海での中国のやり方は横暴だ、と批判し続けてきた。

さらに次期大統領になってからも台湾の蔡英文総統と電話で会談したり、中国に命令されたくないと言ったりしている。中国がこれに不快感を示したと聞かされると、ドナルド・トランプは畳みかけるようにこう付け足している。

「どうして一つの中国政策に縛られなきゃならないのか分からない」

暴言を次々と吐いて対立し、乱打戦で勝ち上がる


このトランプの発言は「一つの中国」というスローガンで台湾を中国のものとして世界に押し付けてきた中国の神経を逆撫でするものであり、中国の苛立ちは相当なものである。

それが中国海軍による無人潜水艇の拿捕事件につながっていると考えるアメリカの分析は間違っていない。

中国はドナルド・トランプの一連の言動に対して、爆撃機による台湾の旋回や無人潜水艇の拿捕によって次期大統領を恫喝にかかっているのである。

今までのアメリカ大統領であれば、恫喝に屈した。現に、バラック・オバマは12月16日の2016年最後の記者会見でこのように中国寄りの発言をしている。

「一つの中国というアイデアで平和が保たれてきた。一つの中国というのは中国の国家としての核心だ。これと逆行した考え方を持つなら、どんな結果を招くのかまで考えなければならない」

しかし、ドナルド・トランプは、ビル・クリントンからバラック・オバマまでの歴代大統領とはまったく毛色の違った性格を持っており、売り言葉には買い言葉で応酬するタイプである。

2017年のトランプ政権から、中国が恫喝してくればアメリカもまた中国を恫喝する時代に転換する。

バラック・オバマの媚中路線は、ヘンリー・キッシンジャー派のものだが、ドナルド・トランプはこのヘンリー・キッシンジャーとも面会を行っている。

しかし、「対立よりも協調から入るべきだ」というキッシンジャーにトランプはまったく共感しなかったようで「つまらない対話だった」と後で吐き捨てていた。

ヒラリー・クリントンとの選挙を見ても分かる通り、ドナルド・トランプのやり方は先手必勝だ。暴言を次々と吐いて対立し、乱打戦で勝ち上がるのがトランプ流である。

こうしたドナルド・トランプ次期大統領の性格から見ると、中国海軍による無人潜水艇の拿捕による恫喝は、今までと違って効果を発揮しない可能性の方が高い。

どの男も、敢えて対立を辞さないと考える人間たち


ドナルド・トランプは対立を辞さない。場合によっては、中国とも泥沼の対立を引き起こす可能性もある。

歴代大統領が中国との対立を避けていたのは、中国との対立に入ったらグローバル化が頓挫するからだ。歴代大統領はグローバル企業によって献金を受けていたので、自ずとグローバル化を推進する方向に向かっていた。

グローバル化を推進するためには「世界の工場」と化した中国と対立するわけにはいかなかった。

しかし、ドナルド・トランプはグローバル化などに関心を持っていない。トランプが関心を持っているのは「アメリカ第一」である。

グローバル化よりもアメリカ、中国よりもアメリカの方が大切だと考えるのがトランプの方向性である。

だからこそドナルド・トランプは今までの歴代大統領のように中国をちやほやして意のままになるのに強烈な不満を持っているし、中国を切り離してしまいたいと考えている。

こうした対決姿勢を補完するために、トランプは国防長官には「狂犬」の異名を持つジェームズ・マティス、国家安全保障担当大統領補佐官には「オバマ大統領は手ぬるい」と痛烈に批判したマイケル・フリンを配置した。

それだけではない。中央情報局(CIA)長官に「軍人」上がりのマイク・ポンペオ、さらに首席戦略官に「極右」だと既存のマスコミが批判しているスティーブ・バノンを選んでいる。

さらに国務長官には、アメリカ政府の言うことすらも無視して石油ビジネスに邁進し、エクソンに莫大な利益をもたらしていた世界最強のビジネスマンである、レックス・ティラーソンを指名した。

国有地や天然資源を管理する内務長官は、アメリカ海軍の特殊部隊「シールズ」に20年所属していたライアン・ジンキ下院議員である。

こうした喧嘩上等の、「敢えて対立を辞さない」と考えている男でまわりを固める意味とは何か。

それは紛れもなく、すぐに起きる「激しい対立」に備えているということである。

中国も折れないが、ドナルド・トランプも折れない。こうした状況から見て、中国とアメリカの火を見るような暴力的対立は、意外に早い段階で起きても不思議ではない。



ドナルド・トランプと、「狂犬」ジェームズ・マティス。トランプは今までの歴代大統領のように中国をちやほやして意のままになるのに強烈な不満を持っている。中国との対立はもう始まっている。


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