2016-12-28

高齢層を見殺しにする社会が生まれる可能性もゼロではない


すでに2000年以降、日本は非正規雇用者が爆発的に増えて雇用が安定しない社会と化したが、それによって厚生年金に加入できない人が増えている。

こうした人は老齢基礎年金(国民年金)のみで老後を生きていくことになるのだが、この年金は40年間の全期間を払っても約月6万5000円なので、これで生きていくことは今の日本では厳しい。

夫婦であれば2人足してやっと13万円で、それに貯蓄の取り崩しで老後を細々と生きていくことになる。

非正規雇用者で人生を暮らしていた人は、貯金などないから老後は一気に貧困に転がり落ちる確率が高い。これが現在の日本の底辺で深刻化している「下流老人」である。

では厚生年金に入っていれば悠々自適なのかと言えば、まったくそうではない。

年金の支給は基本的には65歳からになるのだが、実際には多くの企業は60歳を定年としている。大企業では一足早く、55歳定年というところもある。

その場合、再雇用されるとしても給料は驚くほど低いものになってしまうので、この50代後半の時期から貯金の取り崩しが始まる人も増えてくる。


70代になる頃には貯金も消えて年金で細々と生きる


貯金の取り崩しが月10万円とすると、年間で120万円が消えていくことになる。10年で1200万円が消える。

日本人の貯蓄額はその平均値が1209万円なのだが、この平均値というのは一部の富裕層が底上げしているのでこの額になっているだけだ。

実際には多くの人が1200万円もの貯金を持っていないことの方が多い。1200万円どころか現金で言えば500万円もないという60代も多い。

その場合、どうなるのか。結局70代になる頃には貯金も消えて足りない年金で細々と生きるしかなくなる。

日本の高齢層は今もまだ不動産が役に立つ資産だと思っているのだが、今後の少子高齢化時代を考えると、不動産はよほどロケーションに恵まれた場所でないと資産にならない可能性の方が高い。

特に地方の惨状は目を覆うばかりで、不動産はまったく資産にならない。30年も住宅ローンを組んでやっとそれが自分の物になったとき、資産価値の消えた土地と建物がそこに残されているだけになる。

バブル期、都内から2時間以上も離れたマンションを買った人々も、ローンが終わる頃はマンションが老朽化し、改修費が出せないことで「スラム・マンション」となってしまうような場所も出てきている。

さらにバブル期に建てられたリゾート・マンションも人口減と老朽化によって見捨てられており、今や50万円以下で売っているようなマンションすらもある。

貯金も失い、不動産を売ったら現金が作れると思って買った不動産も価値を失い、このままでいくと今後の日本は「下流老人」で埋め尽くされる国となる。

国になんとかしろと今さら言っても無駄だ。

なぜなら、この後に及んでも誰も「少子高齢化」を解決しようとしていないし、これが日本最大の問題になるという実感も持っていないからだ。

少子高齢化を放置した結果のツケを今の日本人は今後支払っていくのである。

日本の底辺で高齢層の貧困はどんどん広がっていく


国民年金で生活できないというのは、すべての日本人が現実として受け入れるべきだ。国民年金で老後が暮らせるようになる時代は絶対に来ない。

政府は国民年金を次のように考えている。

「最低限の生活は国民の自助努力によって達成すべきであり、国民年金はそれを補助するためのものである」

「国民年金で少しくらいは補助はするが、最低限の生活は自分で何とかしろ」というのが国の立場である。

政府も潤沢な資金を持っているわけではないのだから、それ以上のことはできない。国民の前に政府自身が歳入不足で困難に落ちている。

そうした状況なのだから、日本の底辺で高齢層の貧困はどんどん広がっていくことになるはずだ。まず真っ先に叩きのめされるのは、厚生年金に加入していなかった人たちと貯金がまったくない人たちになる。

厚生年金に加入していないと言えば、フリーランスで仕事をしていた人たちはその代表かもしれない。一部の成功者をのぞくと50代、60代を超えた時点で、フリーランスで仕事をしていた人たちの貧困は目を覆わんばかりと化す。

50代を超えると体力がなくなってしまうので無理が利かなくなり、フリーランサーを雇用する企業も老いた人間よりも若手を選ぶようになって実績があっても仕事が消える。

私は人生の大半を一匹狼として過ごしていた関係上、表社会の人間では旅人や物書き、裏稼業の人間は性風俗や接待業の人間を多く観察する機会に恵まれた。

彼らは一時的に羽振りが良くても、老後を順風満帆に暮らせるとは思えない。私が継続して付き合っている人間はほとんどいないが、その99%は老後は間違いなく落ちぶれていくだろうと予測できるし、事実そうなっている人が多い。

そういえば、名のある作家でも出版不況に巻き込まれていて多くが食べていけない現状にあるのは、作家自身がそう発言するようになってよく知られるようになった。

週刊現代の元編集長である元木昌彦氏によると、大宅壮一ノンフィクション賞を取った作家ですらも生活保護レベルの生活をしているという。

何十冊もの本を出している作家も、出版社に出向くときに電車賃が払えないと言って何キロも歩いてやってきたという話も聞く。そこで編集者に金をたかっていたという。

また、本が何冊も売れて大勢に名前が知られているある作家は、ついに生活破綻して今は介護施設で働いている。

コンビニで働く作家もいれば、妻に食べさせてもらっている作家もいる。それほど、物書きは金にならない。知名度と収入がリンクしないのである。

収入は不安定で厚生年金に加入していない上に貯金もないのだから、老後になって貧困に転がり堕ちても当然と言えば当然の結果ではある。

いずれ、社会は増える高齢層を抱えきれなくなる


ただ、フリーランスの人間を憐れむには及ばない。普通の人々もまた貧困が目の前に迫ってきているので、他人事のように彼らを見ている暇などない。

大企業は利益を求めて全世界に触手を伸ばすので多国籍化していき、世界を俯瞰して安い労働者がいるところでモノを製造し、高い価格で買う人間のいるところで売る。

そのため、高い賃金をもらっていた先進国の労働者がみんな企業にリストラされて再雇用が難しくなり、条件の悪い賃金で働くしかなくなる。

そんなシステムになると、貧困は表社会で真面目に働いていた人間たちにも広がるようになり、それが止まらなくなった。今後も、雇用を排除する技術革新が突き進んで働き口は消えていく。

年金が足りない上に、仕事が消えていくのだから、これで悠々自適の老後が送れるような社会になるわけがない。まして、住宅ローンのようなものを組んでいればなおさらだ。

核家族化が進んだことによって子供が親の面倒を見るというスタイルも今は消えつつあるのだが、最近はさらに厄介な問題も増えた。

子供がいつまで経っても自立できるほどの賃金をもらえる仕事に就けなかったり、自宅に引きこもって外部との接触を断ったりする。そうやって親に寄生しながら生きるような子供が、数十万人規模で出現している。

年金と貯金を子供が食いつぶすのである。

さらに高齢化が進むことによって介護施設も足りず、あっても資金不足で施設に通えないような状態になる。そんな中で貯金も失うので、生活が成り立つわけではない。

現在、生活保護の受給者はうなぎ登りに増えているが、その要因はすべてを失った高齢層の存在がある。こうした極貧の高齢層がさらに増えていくのだから、生活保護受給者はもっと膨らんでいく。

生活保護に頼りたくないという高齢層も多いが、困窮の度が深まると背に腹はかえられない状況になる。こうした層が次々と生活保護の申請をするようになっていく。

しかし、生活保護も無限に高齢層に金を出せるわけではないので、間口はどんどん狭くなっていくだろう。

いずれ、社会は増える高齢層を抱えきれなくなり、自助努力で生きていけない高齢層を見殺しにする社会が生まれる可能性もゼロではない。

「下流老人」の問題は、より深刻化せざるを得ない。



いずれ、社会は増える高齢層を抱えきれなくなり、自助努力で生きていけない高齢層を見殺しにする社会が生まれる可能性もゼロではない。


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