2017-01-17

ドナルド・トランプという凶器でグローバル経済を叩き壊す


アメリカの多国籍企業が凄まじい利益を叩き出し、成長し、株主に大いなる恵みを与えてきたのは、その根底にグローバル経済があったからだ。

グローバル経済とは、多国籍企業が「人件費の安いところで作り、物価が高いところで売る」を実現する壮大な仕掛けのことである。

人件費は、徹底的に削られる。だから、グローバル経済が進むと先進国の人々はリストラされたり、賃金を削減されたり、過重労働を強いられたりして、労働の対価はどんどん減る。

つまり、グローバル経済とは多国籍企業が利益を総取りする世界のことを言うのであり、逆に言えば労働者から搾取する世界であるとも言える。

その結果、何が起きたのか。多国籍企業の支配者である「大株主」が空前の資産を築くようになり、格差の拡大が尋常ではないものへと変化していったのだ。

現代は株式「至上」主義だ。労働力だけで株式資産を持っていない人間は、もはや資本主義の中では奴隷に堕されるだけであり、逆に大株主は何もしなくても資産が極限まで増えていく。

2017年1月15日、国際NGO「オックスファム」は「世界で最も裕福な8人が保有する資産は、世界の人口のうち経済的に恵まれない下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じだった」と報告した。


多国籍企業に対する憎悪が蔓延するようになっている


この裕福な8人の富の源泉は何か。それは、すべて「優良多国籍企業の株式資産」であるということに気付かなければならない。土地でも石油でも貴金属でもない。「株式資産」である。

グローバル化の中で、莫大な富を生み出す多国籍企業の株式をつかむということが、現代の資本主義で成功できるかどうかの境目だったのである。

この事実は、裏を返せばグローバル経済が進めば進むほどより多国籍企業に有利な社会となり、株式資産を持つ者と持たざる者の格差は開いていくということを意味している。

裕福な資産家はその後も富を爆発的かつ累進的に膨らませていき、地球上の富の90%以上を掌握するようになっていくのは言わば必然的なことであった。格差は何をしても、もう縮まることはないのだ。

しかし、世界を完全掌握するはずだったグローバル経済は、ここ数年できな臭い動きにさらされるようになっている。

多国籍企業に対する憎悪が蔓延するようになっているのだ。

この「多国籍企業に対する憎悪」が目立つようになったのは、2008年9月15日のリーマン・ショック以後からである。

サブプライムローンに端を発した超巨大な信用収縮(クレジット・クランチ)は、放置していれば資本主義を崩壊させる可能性すらもあった。

そのため、アメリカ政府は「大きすぎて潰せない」銀行群を次々と税金で救済していき、EU(欧州連合)もまたそれに倣ってサブプライムローンに踊った自国の銀行を救済していった。

しかし、多額の借金をして自宅を買った普通の国民は政府から見捨てられて破綻していき、背伸びして買った家はすべて銀行に取り上げられることになった。

「企業は助けても国民は助けないのか?」

この政府のやり方は欧米で激しい怒りを引き起こすことになり、それが後に「ウォール街を占拠せよ」という反格差運動に結びついていくことになった。

今の現状をチェンジしてくれる大統領を望んでいた


ウォール街では何が起きていたのか。そこでは、世界最大の株式市場を舞台にして、投資家や銀行家たちが顧客の資金にレバレッジを賭けてトレードに明け暮れていた。

そして、「トレードでの儲けは自分のもの。トレードでの損は客のもの」と言いながら、博打を繰り返して多額の報酬を手に入れていた。

その挙げ句に2008年9月15日に金融市場がすべてを巻き込んで壮大に破裂していくと、今度は政府にツケを払わせて自分たちはのうのうと生き延びたのである。

政府がウォール街のギャンブラーたちを救済するために使った資金は、もちろん国民の税金である。この不条理に普通のアメリカ人は怒り心頭に発して、以後ウォール街は「国民の敵」と認識されるようになった。

こうした「ウォール街を占拠せよ」という格差に対する反対運動は、抗議デモを起こすたびに警察当局に弾圧されるようになっていった。

その結果、次第にデモは起こされなくなっていったが、それで人々はグローバル経済を受け入れたのかと言えば、そうではなかった。

「1%」と呼ばれる一握りの資産家が富を独占し、「99%」と呼ばれるその他の層が取り残される構図は、グローバル経済の中でより強化されるようになっている。

そしてグローバル経済の中で、多国籍企業はどんどん人々の賃金を削り、合理化によってリストラを恒常化させ、ワーキングプアを生み出す社会が、人々を追い詰めていた。

そのため、格差拡大がさらに鮮明に意識されるようになり、欧米では「反グローバル化、反移民・難民、反格差」の考え方が草の根に広がっていくようになったのだ。

バラック・オバマ大統領は、こうしたアメリカの底辺に広がる絶望を「チェンジ」するために選ばれた大統領だったが、格差解消のためにこの大統領は何もしなかった。

バラック・オバマは失望され、人々は本当にアメリカの今の現状をチェンジしてくれる大統領を望んでいた。

ドナルド・トランプという「凶器」を振りかざす99%


そこに現れたのがドナルド・トランプである。

この荒々しい言動をする粗暴な男は、おおよそ大統領の品位には欠けており、マスコミ受けも悪く、国民の半分は「本当に大丈夫なのか」と資質を疑問視している。

しかし、アメリカ人の半分はこの男を大統領に選んだわけであり、今後は4年から8年の間、アメリカの命運はこの男に委ねられることになる。

アメリカ人の半分がこのドナルド・トランプを支持したのはなぜか。それは、この男が「アメリカ第一=反グローバル経済」を謳っていたからだ。

「多国籍企業の富の源泉であるグローバル化を阻止し、雇用をアメリカに戻し、多国籍企業よりもアメリカの労働者を儲けさせる」と荒々しく宣言したのがこの男だったのだ。

中国やメキシコに関税をかけるというのは、空虚な選挙公約だったのではないかと思われていたが、この男は本当に報復関税をかけようとしている。

特に中国に対しては非常に敵対的で「中国製品に45%の関税をかける」と今から豪語しているのである。

アメリカがこのように動くと、中国もまた報復に動くのは分かりきっているので、2017年より「グローバル経済」は今までにない激震に見舞われるのは確実になった。

しかし、これこそがアメリカの「99%」の層が望んでいたことであるというのは忘れてはならない。99%はグローバル経済を破壊したいのである。

それが社会の底辺で起きている動きなのだ。

グローバル経済の浸透によって格差の下に転がり堕とされたアメリカ人が、ドナルド・トランプという「凶器」を手に入れた。そして、その凶器を振りかざしてグローバル経済を叩き壊そうとしている。

当然のことながら、これから起きるのはグローバル経済の受難であり、多国籍企業の成長率の低下であり、競争力の減退である。この状態で株価は上がるのか下がるのか。

下がるに決まっている。

ただ、勘違いしてはいけない。老獪な投資家たちは株価が下がれば売り飛ばすのではなく、逆に暴落した株式を静かに買い漁る。そして、ドナルド・トランプが自滅してグローバル経済が復活したとき、真っ先にグローバル経済復活の恩恵を手に入れる立場になる。

ドナルド・トランプという嵐が去った後、格差はより深まっている現実を見て、私たちは震撼することになるだろう。



当然のことながら、これから起きるのはグローバル経済の受難であり、多国籍企業の成長率の低下であり、競争力の減退である。この状態で株価は上がるのか下がるのか。下がるに決まっている。


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