2017-10-25

世帯総所得300万円未満の世帯割合増加と報告した厚生労働省


2017年10月24日、厚生労働省は「平成29年版厚生労働白書」を発刊したのだが、この中で注目されているのは「それぞれの年代で世帯総所得300万円未満の世帯割合が増加している」という部分だ。

30~39歳の世帯も、40~49歳の世帯も、50~59歳の世帯も、世帯総所得300万円未満の世帯割合が「増加」している。

これは、ひとり世帯が増えたこともあるのだが、所得そのものも明らかに低い方にシフトしているというのが厚生労働省の発表である。

当然だが、年収が400万円から700万円の世帯は減っている。減った分が、年収300万円未満の方に移っているのだ。

賃金の低下を受けて、共働きの世帯は増え続けており、今や夫婦のいる世帯の60.8%が共働きになっている。夫の稼ぎだけでは食べていけないので、共働きが多数派になっているということなのだ。

ところで、2017年10月20日、日本経済新聞は2012年12月の安倍政権の誕生から現在までに景気拡大が58カ月続き、「アベノミクス景気」が「いざなぎ景気」を抜いた可能性が高いと報告している。

ここ数年、景気は「良かった」のだ。


株価上昇よりも非正規雇用や賃金低下のインパクト


2017年10月に入ってからは、日経平均株価が15営業日連続の値上がりとなっている。売国民主党時代は8000円台だった株価も、今では2万1000円超えを果たしている。

売国政党だった民進党が崩壊し、野党が散り散りばらばらになったことを好感して市場は買い上げているのである。円安も進んでいる。

これが何を意味しているのかというと、「株式を保有していたりドル資産を持っている層は、2012年12月からは何もしなくても資産を膨らませた」ということだ。

しかし、国民の8割は株式を保有していないのだから、恩恵を受けている層はそれほどない。

株式を保有するというのは、金銭的に余裕のある層がやっているものであり、貧困層はそんな余裕などまったくない。

つまり社会の底辺は、株価がアベノミクス景気がいざなぎ景気を越えたとか、株価が15営業日連続の値上がりになったということよりも、ひとり世帯が増えたとか非正規雇用が増えて賃金の低下したという方に重いインパクトを受けている。

日本が格差社会になって二極分化し、さらに年収300万円以下の世帯が増えているのは、私たちはすでに体感として知っているのだが、これは厚生労働省のデータによって裏付けされた。

企業は、引き続き拡大深化していくグローバル化に対処するために非正規雇用も常態化させる。経営者が失敗したら、すぐにリストラに走る。福利厚生も着実に切り捨てられる。

一方で少子高齢化で社会保障費の増大に苦しむ政府は、今後も消費税を含めてありとあらゆる税金を薄く広く嵩上げし、社会保障費の引き下げを行ってくる。

雇用環境が悪化し、政府の救済もない。貧困層はもう這い上がれない状況に追い込まれている。

だから、這い上がることを考えるよりも、むしろ貧困の中でいかに潰されないかで生きるかを追求すべき時期に入ってしまった。事態は改善されるのではなく、悪化するのだ。

切り捨てられ、消費され、見捨てられる労働者の姿


すでにブラック企業の存在は社会的に認知されるようになっているのだが、相変わらず過労死が続いている。

このブラック企業の本質は、「安い賃金で、人間の限界まで働かせる」という部分から来ている。

限界まで働かせるという部分があまりにも凄絶なので、社会はブラック企業の「過労働」の部分に着目しているが、「安い賃金で」という部分も着目されていい。

このような企業では、サービス残業で極限まで人をこき使う。それによって企業は人件費が削減されるのだが、働かされている人は精神的に壊れる。

精神的苦痛を味わって使い捨てされた若者が、社会に対して希望が持てるはずもなく、次に働くとしても精神的に受けた傷が癒えないと何もできない。

搾取されて、心身共に壊れて捨てられ、ブラック企業の方は従業員が壊れても何の責任も取らない。ブラック企業もまた、貧困層を生み出す要因となる。

最近は、通常の企業も次々と正社員をリストラする動きがあるのは知っての通りだ。東芝、タカタ、神戸製鋼所を見ても分かる通り、経営者が失敗したら経営者よりも社員が大量にリストラされる。

不祥事を起こさなくても、少しでも景気が悪くなれば企業はさっさと従業員を切り捨てて身軽になる体質に変化した。

かつて、日本では終身雇用や年功序列というシステムがあったことが嘘のように、企業は容赦なく社員を切り捨てる。そして、次に人を雇うときは派遣労働者として雇うのである。

派遣労働者では給料は下がる上に、企業の都合でいつでも解雇される。これによって企業はコスト削減を達成するが、人々は将来設計を描けない立場に落とされる。

もちろん、リストラという突然の不幸に雄々しく立ち向かう人が大半だが、中には精神的なショックから抜け出せず、やがて鬱病になって壊れていく人も激増している。

会社から捨てられ、社会から不必要だと言われるのだから、その衝撃は端から見ている以上に深いものがあるはずだ。中にはそれで自殺に追いやられる人もいる。

日本の底辺の荒廃がさらに進んでいくことも読める


政府は少子高齢化で増大していく社会保障費に危機感を覚えており、あらゆる出費を削減する動きを見せている。

医療費の自己負担も増える。2014年から高齢者の特例が廃止されて医療費の1割負担は2割から3割にアップしたが、こうした動きはこれからも続き、公的年金控除での税制優遇も見直される。

今後、高齢者の自己負担が増える方向に向かって行き、医療費が減ることは絶対にない。年金の引き下げもある。これによって高齢の貧困層もまた苦境に落ちる。

さらに、母子家庭も悲惨なことになる。生活保護を利用しているのは高齢者と共に母子家庭が突出しているのだが、この生活保護も薄く確実に引き下げに動いている。

生活保護については、不正受給の問題や、外国人への支給や、働いている人よりも多くもらえる問題等があって、常に批判の対象になってきた。

生活保護費の引き下げで決定的なダメージを受けるのは、高齢者ではなく母子家庭の女性たちだが、その理由は単純だ。

高齢者は自分が消費を我慢すれば何とかなるかもしれないが、母子家庭では自分が何かを我慢しても、子供に我慢させることができないという問題があるからだ。

資産を持っている人間から見れば、月1万円や2万円が減額になったところで大したことはないと思うかもしれない。しかし、ギリギリで生活している人間にとっては、その1万円が致命傷になりかねない。

物価が上がり、消費税も上がり、低賃金の仕事にしか就けず、それで生活保護が減額になっていく。そして、貧困者がさらなる貧困へと追い込まれていく。

今、日本で起きているのは、貧困層がさらに貧困に落ちていく大きな流れなのである。貧困層にとっては、アベノミクスはほとんど関係ない。

ここに超高齢社会と、少子化が追い込みをかけて来るのである。それが分かっていると、今後も日本の底辺の荒廃がさらに進んでいくことも読めてくるはずだ。



『山谷。かつてのドヤ街の光景から少子高齢化の未来が見える』より。今、日本で起きているのは、貧困層がさらに貧困に落ちていく大きな流れなのである。貧困層にとっては、アベノミクスはほとんど関係ない。


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